雨漏りの原因ランキングTOP5と調査の本質
“赤外線・紫外線の2つツール × 構造理解 × 調査員の考察力”で読み解く本当の原因

雨漏りは、「屋根が古くなったから」「外壁にひびがあるから」
——そんな単純な理由で発生するわけではありません。
実際の現場では、
複数の原因が絡み合い、見た目では絶対に言っていいほど簡単には判断できない
というケースが大半です。
本コラムでは、建築業界で報告されている傾向と、
当協会の専門調査員が現場で蓄積してきた知見を組み合わせ、
雨漏りの代表的な原因を“ランキング形式”で整理します。
そして後半では、
サーモグラフィや紫外線調査液の本当の役割
および
調査員の考察力がなぜ重要なのか
をわかりやすく解説します。
■雨漏りの原因ランキング(総合)
1位:防水層の劣化・施工不良(約35〜40%)
最も多いのが屋上やバルコニーなど、水平面の防水不良です。
主な例
- 防水層の亀裂・浮き・剥離
- 立上り部の処理不良
- ドレンまわりの雨仕舞不足
雨水が滞留しやすく、日射や温度差の影響を強く受けるため、劣化が進行しやすい部位です。
2位:外壁のひび割れ・シーリング不良(約25〜30%)
外壁は、浸入部と漏水部が離れやすいという特性があります。
典型例
- サッシまわりのシーリング破断
- 外壁目地の劣化
- 施工時の雨仕舞処理不足
細かな隙間からでも雨水は浸入します。
3位:屋根材の浮き・ズレ・破損(約15〜20%)
台風や強風後に発見されるケースが多い原因です。
例
- 棟板金の浮き・固定不良
- 瓦の割れ・ズレ
- スレート釘の浮き
- 谷板金の腐食
屋根は見た目が正常でも、内部で浸水していることが珍しくありません。
4位:バルコニー・笠木・手すり部の不具合(約10〜15%)
見落とされやすい“隠れ主要原因”。
例
- 笠木ジョイントの隙間
- 手すり架台のビス穴処理不足
- 下地の腐朽による動き
笠木は雨漏りの弱点が集中しやすい部位です。
5位:設備配管など貫通部の処理不良(約5〜8%)
エアコン配管、電線引込口、換気ダクトなど、
工種が異なる“境界部”は雨仕舞が不完全になりがちです。
例
- 配管周りのシーリング未施工
- 防水テープの不備
- 化粧カバー内部の結露による浸水
新築でも発生することがあります。
■よくある誤解
●誤解1:雨が落ちてきた場所が原因
→実際は、浸入部から数メートル以上離れて出てくることも多い。
●誤解2:コーキングをすれば止まる
→応急処置にはなるが、根本原因が残るため再発リスクが高い。
●誤解3:屋根さえ見れば原因が分かる
→実は、外壁・バルコニー・サッシのほうが原因率が高い。
■サーモグラフィ・紫外線調査液の本当の役割
ここからが、最も誤解されやすい重要なポイントです。
●サーモグラフィカメラは「現象を読むためのツール」
赤外線サーモグラフィカメラは、
表面温度の変化から異常部分を読み取る技術です。
- 部材が濡れて冷えている
- 乾きにくい部分がある
- 温度分布が不自然
こうした“結果としての状態”は分かりますが、
内部の雨水の流れそのものが見えるわけではありません。
●紫外線調査液は「因果関係を証明するツール」
紫外線調査液は、
内部のルートを発光した水で追う技術ではありません。
できることは
「特定した浸入口から入った水が、どこに出てくるか」
を色の一致で証明すること。
つまり、
浸入口と漏水箇所の関係性を確定させるためのツールです。
■もっと重要なこと:浸入ルートを特定するのは“調査員の考察力”
サーモも紫外線も、
自動で原因を教えてくれる機械ではありません。
浸入ルートの判断に必要なのは、
- 建物構造の理解
- 劣化の進み方
- 雨水の動き方
- 過去の事例
- 現場観察
- ツールで得た情報をどう読み解くか
これらを組み合わせた 調査員の推論力 です。
つまり、
原因を見つけるのは調査員。
ツールはその考察を裏づけ、浸入口を証明するためのもの。
これが当協会が最も重要視している技術思想です。
■※ランキングの根拠について(信頼性のための注釈)
本コラムで示した雨漏り原因ランキングは、
建物全体を網羅した公式統計ではありません。
以下を総合して導いた“傾向”です。
- 業界の相談データ
- 雨漏り修理の実例分析
- サッシ・外壁・屋根の典型的な劣化事例
- 当協会および専門調査員の現場知見
複数のデータでは、
天井・サッシ・外壁・バルコニー・屋根が
雨漏り原因として比較的多く報告されており、
当協会の現場経験とも大きく一致しています。
そのため、本ランキングは
「よく見られる代表的な原因傾向」として掲載しています。
■まとめ
雨漏りはいくつかの要因が絡み合う複雑な現象です。
そのため、見た目だけでは原因特定は難しく簡単にはわかりません。
- サーモカメラは“状態を示すツール”
- 紫外線調査液は“入口と出口の因果関係を証明するツール”
- 浸入ルートを見極めるのは“調査員の考察力”
この三つがそろって初めて、
誤診なく、再発しない雨漏り調査が可能になります。
当協会は、
調査員の判断力を育て、正しい調査手法を普及すること
を使命として活動を続けています。


